眼を閉じているのに光が見える「網膜剥離」
失明などの視覚障害を招く目の病気として知られる「網膜剥離」。
その初期症状は前述の飛蚊症のほかに、光視症が挙げられます。
光視症とは、視野の一部でフラッシュのような光が見えることをいいます。
暗いところで、あるいは目を閉じているにもかかわらず、目の端のほぅでピカッと光が走ったと感じたことがあれば、それが光視症です。
これは、本来外界からの光を受けるはずの視細胞に別の物理的な刺激、
つまり、網膜に癒着している硝子体が網膜を引っ張るという刺激が与えられたため、視細胞から放電が生じて起こるのではないかと考えられています。
さらに網膜剥離が進むと、上から暗幕が下がってきているように見えたり、雲が出ているわけでもないのにそう見えるなど、眼前の風景の一部に見えないところが出てくるようになります。
これを「視野の欠損」といいます。
網膜がはがれると、その部分の視細胞が、明暗・色・形を感知するという役割を果すことができなくなるため、視野の欠損が生じるわけです。
網膜に穴があいてはがれる
カメラでいうところのフイルムにあたる網膜は10の層からなる膜で、その層は網膜の一番外側(脈絡膜に接する)網膜色素上皮と、
視細胞がある視細胞層から内側の層すべてを総称した「感覚網膜」の2つに分類することができます。
網膜剥離とは、感覚網膜が網膜色素上皮からはがれた状態のことをいいます。
網膜剥離には、大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは、何らかのきっかけで網膜に穴があき、そこから液化した硝子体の液体が流入して
起こる(「裂孔原性網膜剥離」です)。
もう1つは、糖尿病性網膜症や網膜静脈閉塞症などで、網膜の表面に膜状の組織が生じ、それが網膜を引っ張って起こる「牽引性網膜剥離」と、
加齢黄斑変性や中心性網脈絡膜症などで網膜の下に血液や水がたまって網膜がはがれる「しょう液性網膜剥離」で、これら2つを「非裂孔原性網膜剥離」と呼びます。
一般に網膜剥離という場合は前者を指すことが多いため、ここでは前者のタイプの網膜剥離について述べます。
網膜剥離は網膜に穴が開いてしまうところから始まりますが、その穴には何かのはずみで硝子体が網膜を引っ張り、そのために網膜が破れてできる「裂孔」という穴と、
網膜に自然に生じた「円孔」いう穴の2種類があります。
裂孔は、硝子体の老化などによって引き起こされた後部硝子体剥離が原因でできます。
そのため、裂孔によって生じた網膜剥離は中高年に多く見られます。
一方の円孔は、もともと網膜に弱い部分があり、その部分に自然と穴があいてしまう、
あるいは、目に何らかの衝撃(野球やサッカーのボールが目にあたる、日の辺りを殴られるなど)が加わったことがきっかけでできます。
この円孔によって生じた網膜剥離は、若年者に多く見られます。
また、強い近視がある人は網膜の一部が薄くなっていることがよくあり、円孔にょる網膜剥離が起きやすいといわれています。
網膜剥離を予防する治療、または網膜を接着させる治療で視力を守る
みなさんのなかには、
「網膜に穴があく → 網膜剥離が起きる → 失明」というシナリオを思い描いている方が少なくないでしょう。
しかし、近年は医療技術が進歩し、失明を避けることは決して不可能ではなくなっています。
網膜に穴があいた時点で穴の周囲をレーザー光線で焼く「レーザー光凝固」という治療を行なえば、網膜剥離を防ぐことができます。
ただし、網膜がはがれてしまうとレーザーによる治療は困難となります。
しかし、手術を早めに行ない、はがれた網膜を元の位置に戻すことができれば視細胞の機能は回復し、低下した視力を改善することが可能です。
ただし、網膜の中心部、つまり良好な視力を得るうえで重要な役割を担っている黄斑部にまで剥離が進むと、低下した視力を完全に元に戻すことが難しくなってしまいます。
ですから、異変に気づいたときは直ちに眼科を受診することがとても大事です。
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