危険な増殖網膜症
増殖網膜症の段階では、新生血管が出現するだけでなく、新生血管からの出血も起こります。
それでもなお、極端に視力が低下しないこともあり、異変に気づかない人もいます。
新生血管からの出血が硝子体に広がると硝子体出血と飛蚊症 (31ページ) が生じます。
硝子体出血が増えると、目の前に手をかざしても指の数が数えられないぐらい視力が低下します。
また、新生血管の周囲に膜状の組織が作られるようになります。
これを「増殖膜」といいます。
増殖膜は硝子体や網膜の表面を足場にしてどんどん成長していきます。
増殖膜は成長過程で収縮する傾向があるのですが、増殖膜は新生血管を茎として網膜とくっついていますので、増殖膜が収縮することで網膜は引っ張られて剥離してしまいます。
網膜剥離を起こした範囲が広がっていき、網膜全剥離になると失明ということになります。
さらに、血管新生緑内障といって隅角に新生血管が生じると、眼圧が正常の2倍から3倍に上がってしまいます。
緑内障手術を行なっても眼圧を長期にわたりコントロールするのは難しく、失明の危険性が非常に高い合併症です。
視力を守るもっとも効果的な方法は「眼科受診」
網膜症がどんなにやっかいで、恐ろしい病気であることがおわかりいただけたでしょうか。
しかし、単純網膜症の段階で発見・治療を行なえば網膜の病変は治り、視力低下を防ぐ可能性は十分あります。
前増殖網膜症、あるいは増殖網膜症でも障害の程度が軽い場合なら、治療によって視力を改善できる可能性はかなり高いのですが、
進行すればするほど治療は難しくなり、治療に成功してもよい視力は得られないのが現状です。
なぜなら、糖尿病そのものも自覚症状に乏しいために診断がついた時点で糖尿病の発症からすでに数年経過し、網膜症を発症していることも珍しくないからです。
また、網膜症は糖尿病の雁患期間が長くなればなるほど発症する可能性が高くなります。
ですから、内科で糖尿病の治療を受けながら、定期的に継続して眼科で検査を受け続けることが理想的です。
先に述べた前増殖網膜症は健診などで行なう、中央一枚の眼底写真では単純網膜症とほとんど、区別がつきません。
糖尿病の病変は眼底の周辺部から発症するので、眼科で行なう、眼底をすみずみまで観察するために散瞳薬を点眼して瞳を広げて行なう眼底検査は必須の検査です。
さらに、毛細血管閉塞を診断するのには蛍光眼ていそうえい底造影検査が必要ですし、黄斑症の診断には光干渉断層計が有用です。
これが早期治療につながり、失明という事態を回避できるのはもちろんのこと、日常生活に不自由のない視力を生涯保つことを可能にするのです。
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