近くばかり見ていると近視になる
近視は読み書きを生活の中心にすえた文明社会に特有のものです。
アフリカのある部族では、住民の平均視力が1.5以上あり、視力4.0の人もめずらしくないそうです。
日本でも縄文時代、狩猟を生業としていたころは、みなさん視力がよかったにちがいありません。
遠くを見る機会が多いと近視にならないことは、たとえば、船乗りさんに遠視が多いことからも裏づけられます。
近視では目の前後の長さ(眼軸長)が伸びて、スクリーンに相当する網膜が遠ざかることにより、ピントの合う位置が正常より前になっています。
では、眼軸長はなぜ伸びるのでしょうか。
ノーベル賞をとったヴィーゼルという人の実験によると、生後すぐ目隠しをされたヒヨコは、成長とともに目隠しをされたほうの眼だけ眼軸長が異常に伸びてしまうことがわかりました。
つまり、視覚の刺激(ものを見ること)がないとピントを合わせる位置がくるってしまうのです。
このことから、普段、ものを見るという刺激によって、眼軸の長さが微妙に調整されていることがわかります。
これは瞬間的にピント合わせをする調節と異なり、もっと長い時間をかけて起きる変化です。たとえば一ヶ月とか一年とか。
近くばかりを見ていると、近くにピントが合うほうが都合がよい結果、長い時間をかけてすこしずつではありますが、眼軸長が伸びてしまうのかもしれません。
近視は文明社会における適応現象ともいえるでしょう。
近くのものを見るのが主体の生活を続けている結果、近くのものが見やすいように適応してしまうのです。
事実、50歳を過ぎて老眼が出てくると、近視の人は老眼鏡なしで本が読めるのに対して、近視のない人は老眼鏡が必要になってきます。
まことに近視は近業に適しているのです。
高齢者のように老眼が出ている人では、近視のほうが便利な場合も多いと思います。
でも若い人にとって近視はやっぱり不便です。
テレビを見るとき、車に乗るとき、スポーツをするとき、人と会うとき、映画を見るとき、黒板を見るとき等々、近視では困る情景を数え上げたらきりがありません。
ですから近視の人にとって、メガネやコンタクトは体の一部のようになってしまいます。
近視は屈折異常の程度によって分類されますが、屈折異常がひじょうに強い人のなかには、眼底の網膜や脈絡膜に出血や萎縮などの病変が出て、矯正視力が低下することがあります。
この状態を病的近視、または変性近視とよんで、矯正視力の低下していない普通の近視と区別します。
変性近視では網膜の黄斑部分に変性、萎縮が生じ、矯正視力が低下します。
変性近視によって矯正視力が低下している場合でもLASIKにより視力が改善しますが、残念ながら術後の視力には限界があります。
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